何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。






中井くんは、相変わらずトラ子の里親探しやお世話に協力してくれていた。


「昨日、猫が飼いたいって昔言ってた中学の時の友達に聞いてみたんだけどさ。ーーダメだった。最近、近所で生まれた子猫を貰ったばっかりなんだって。タイミング悪すぎじゃね、もう」


ある日の休み時間に、中井くんが申し訳なさそうに話してきた。


「そっかあ、残念」

「ほんとそれ。まあ、俺もまた親父を説得してみるから。なんとなくだけど、もうちょっとで折れてくれる気がすんだよね」

「そうなの?」


すると中井くんは、悪戯っぽくニヤリと笑う。


「トラ子の写真を親父に見せてるんだ。最初は嫌がられたけど、基本猫好きだからさあ、俺の親父。無理やり見せ続けたら、かわいいなあって言うようになって、昨日なんて「今日は写真撮らなかったのか」って聞いてきたんだよ?」

「へえ!」


なかなかいい展開だ。もう少し押せば、写真から情がわいて、トラ子を引き取ってくれるかもしれない。

そして私は、「ありがとう、いろいろやってくれて」と言おうと、口を開きかけた。ーーが、その時。


「やっほー! 悠ー! 今度の休み、同中のみんなで遊びに行かなーい?」


急に、どこからともなく、私の知らない女の子がやってきて、中井くんの肩を叩いた。