何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

「ほんと? 独特の言い回しとかあるから、好みが分かれる作家なんだけよね。はまる人はすごくはまるんだ! 加奈ちゃんの好みだったんだー」

「うん。もう終盤の展開が胸熱だった……! この人の別な作品って、ある?」

「あ、私いくつか持ってるよ。貸すよー」

「マジっすか! やばい、楽しみー」


加奈ちゃんは文芸部ということもあってか、読書が趣味だった。私もよく本を読むので、最近読んだ本について話してみたら、思いの外盛り上がった。

ちなみに加奈ちゃんは、私のことを怖いとは思っていなかったらしい。いつも本ばっかり読んでいるから、あまり周りが気にならないとか。

ーーなんだ。じゃあもっと早く仲良くなればよかった。


「あ、そうそう。そんな本好きな2人にプレゼントでーす」


にこにこしながら言う詩織が取り出したのは、平たくなった花が透明の薄いプレートに挟まれた縦長の物体。上部には、紐も取りつけられている。


「これって、本に挟むしおり……?」


私がそう尋ねると、詩織は少し得意そうな顔をする。


「そうそう! 二人とも本をよく読んでるから、いいかなって。カスミソウを押し花にしてみました!」

「えー、めっちゃかわいいじゃないっすか! もらっていいのー?」


しおりを手に取りながら、目を輝かせて加奈ちゃんが言う。


「いいよ、ってか2人にあげるために作ったんだからさあ。貰ってくんなきゃ涙が出ちゃうわ」