安田くんが私に詰め寄る。自分の財布が盗まれたのかもしれないのだから、当然の行動だ。
盗っ人の疑いは晴れるが、猫のご飯を見られたら笑いものにされてしまう。これ以上、クラスで変な目で見られるのは御免だった。
どうすればいいかわからなくて、私が固まっていたーーその時だった。
「え、なになに、なんの騒ぎー? なんかみんな怖いんですけど」
場の雰囲気にそぐわない、明るい声音。中井くんの声だった。彼は少し遅れて教室に戻ってきたのだった。
「ーー安田の財布がなくなってさ。それで、体育に出てなかった折原さんが盗ったんじゃないかって流れで」
「はあ?」
遠目で見ていた男子の言葉に、中井くんは眉をひそめた。呆れたような面持ち。
そしてつかつかと私の元へと歩いてくると、私と安田くんとの間に割って入った。
「安田、この人そんなことしないから。落ち着けって」
何も言っていないのに、自信満々にそう言った中井くん。ーーなんで。どうして。
そんな風に、思ってくれるの。
「え、で、でも。リュックの中見せてくれないんだぜ? 盗んだ財布が入ってるからじゃ……」
「いやいや、違うって。たぶん、猫のご飯が入ってるからだから」
「え……ええええ!」
盗っ人の疑いは晴れるが、猫のご飯を見られたら笑いものにされてしまう。これ以上、クラスで変な目で見られるのは御免だった。
どうすればいいかわからなくて、私が固まっていたーーその時だった。
「え、なになに、なんの騒ぎー? なんかみんな怖いんですけど」
場の雰囲気にそぐわない、明るい声音。中井くんの声だった。彼は少し遅れて教室に戻ってきたのだった。
「ーー安田の財布がなくなってさ。それで、体育に出てなかった折原さんが盗ったんじゃないかって流れで」
「はあ?」
遠目で見ていた男子の言葉に、中井くんは眉をひそめた。呆れたような面持ち。
そしてつかつかと私の元へと歩いてくると、私と安田くんとの間に割って入った。
「安田、この人そんなことしないから。落ち着けって」
何も言っていないのに、自信満々にそう言った中井くん。ーーなんで。どうして。
そんな風に、思ってくれるの。
「え、で、でも。リュックの中見せてくれないんだぜ? 盗んだ財布が入ってるからじゃ……」
「いやいや、違うって。たぶん、猫のご飯が入ってるからだから」
「え……ええええ!」



