何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

「盗んだとしたら、3時間目いなかったやつじゃない?」

「でもみんな体育で、体育館にいたでしょ。女子はバレーボール、男子はバスケで」

「じゃあクラス外のやつの犯行か」

「ーーちょっと待って。体育、出ていない人いるんじゃない?」


私にとって、雲行きが怪しくなる誰かの発言。一瞬にして肝が冷える。

そして、ターゲットが私になるのに、時間はかからなかった。


「確か、折原さんさっきの時間体育いなかったよね?」

「え。じゃあ折原さんが……?」

「あー……なんか、やっぱりって感じ……」


周囲の冷たい視線が私に突き刺さる。まるで針のむしろだ。私は何も言えず、震えそうになる体を必死で落ち着かせようとする。


「ーー折原さん。リュックの中、見せてくれる?」


安田くんが、私を睨みつけながら、冷たい口調で言った。

もちろん私は彼の財布なんて盗んでいないから、通学リュックの中を見せれば簡単に疑いが晴れるだろう。

しかし、私のリュックの中には、トラ子にあげるための猫用のおやつがぎっしりと入っている。

それをクラスみんなに見られたら、馬鹿にされそうな気がして。友達がいないから、猫を相手にするしかない、寂しいやつだと思われそうな気がして。

私は安田くんとは目を合わせられず、何も答えられなかった。