何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

などと考えながら教室へ入ると、やたらとざわついていたので、私は入ってすぐに足を止めた。


「無いんだよ! 本当に」

「えー、じゃあ泥棒が入ったってこと……?」

「他に盗まれてる子、いない?」


なんだか物騒な単語が聞こえてくる。胸がざわざわして、落ち着かない。


「……何かあったの?」


私は思わず、近くにいたクラスメイトの女子に話しかけた。

彼女は私が話しかけてくるとは思っていなかったようで、一瞬身構えた。

ーーいやいや、私だって人間語話せるんですが。なんだと思っているんだろ、一体。


「あ……安田くんの財布がなくなっちゃったらしくて。泥棒が入ったんじゃないのか、ってみんなで話していたところ、です……」


何故か敬語で話してくるクラスメイト。やっぱり相当ビビられている。ーーまあ、もう慣れたけれど。

しかし本当に泥棒が入ったんだとしたら、物騒な話だ。私は自分の席へと行き、カバンの中身を確認する。

あ、よかった。私の財布はあった。

ーーと、安堵していると。