何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

そう言った中井くんの手は、今度はトラ子の尻尾の付け根らへんを撫でていた。

トラ子はごろんと横たわり、「もっと撫でてー」というような機嫌の良さそうな顔をしていた。

本当に、猫のことをよく知っているんだなあ。

中井くんになら、トラ子のこと相談できるかも。


「あのね、中井くん」

「ーーん?」

「実は……」


私はトラ子の里親を募集しているけれど、なかなか見つからなくて困っていることを説明した。

ーーすると。


「なるほどねー。じゃあ俺もあたってみるよ。友達で飼えそうなやつに聞いてみる」

「ほんと!?」


クラスの中心人物である中井くんは、友達も多いだろう。ぼっちの私なんかよりもネットワークが充実しているはずだ。

人望がありそうな彼なら、すぐに貰い手を見つけてくれるような気がした。


「って言うか、俺ん家で飼えないかも聞いてみるよ。昔飼ってたから、家族みんな猫好きだし」


さらに希望が膨らむようなことを言ってくれる。

ーー中井くん。授業中寝てばっかりで宿題もやってこないような、不真面目で軽そうな人だと思っていたけど。