何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

*悠side


眠っている間の記憶はぼんやりとあった。もちろんすべては覚えていないけれど。

しかし、桜がほとんど毎日、俺に優しく話しかけてくれていたことは、ちゃんと覚えていたし、話の内容もそれなりに聞こえていたーー気がする。

なんだか、トラ子の話ばっかりだったような。

まあ、そんなわけで、目を覚ました俺はそこに桜がいることが、当たり前のように思えた。ーー俺は安心して、目を覚ますことが出来たんだ。

桜がずっとそばにいてくれたお陰で。

目覚めた俺に、桜が口付けをした。眠っていた期間が何年だったのか、正確には分からないけれど、相当久しぶりの口付けであることは間違いない。

ーー彼女の柔らかい唇の感触は、全く変わっていなかった。いまだぼやけた視界に映る、美しく優しいほほ笑みも。

でも、少し大人になったかな。


「ーーおかえり、悠」


そう言った君に、俺はか細く掠れた声で、ただいまと、呟いた。



fin.