美香に応えながら、悠の顔をのぞき込む。栄養剤をきちんと打たれているお陰か、血色はそんなに悪くない。

だけど、さすがに7年間も寝たきりのため、余計な肉は落ちてしまって頬はこけていた。きっと身体もガリガリになっているだろう。

たぶん、目覚めたあとは相当なリハビリが必要だ。


「しっかしよく寝るねー、この男は」


すると美香ちゃんが、悠の顔をマジマジと見て冗談交じりに言った。


「ほんとだよねー。いつまで待たせる気なんだろ、まったく」

「うんうん。こんな可愛い桜を長い間待たせるなんて、罪な男。ーー早く起きないかなあ、マジで」


美香の言葉の最後の方に、切なさが入り交じっていたのは気のせいではないだろう。

悠がひなげし病による眠りについてから、数日前にとうとう7年が経過してしまった。しかし、まだ起きる気配はない。

まあ、医者の話では前兆もなくいきなり起きることもよくある病らしいので、ひょっとしたら今目の前で目覚める可能性もあるけれど。

悠と同じひなげし病にかかっていた、渉くんと実くんのお母さんは、一年ちょっと前に無事に目覚め、長いリハビリを終えたつい最近退院した。

幼稚園の頃は、おねーちゃんおねーちゃんと懐いてくれていた実くんも、小学校に上がる頃から大人しくなっていった。