何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

先日の古文の時間のことを思い出す。あんな、少し助けたくらいで。まあ、その前にも何度か似たような場面で軽く救ったことはあったが。

別にそんなに大したことをしているとは思えなかった。

だけど今日も中井くんは男子達に「怖くないよ」って言ってくれた。どうして彼はそこまで、私のことをそう思ってくれるのだろう。


「そんなこと、ないよ」

「そうかなあー、猫にあんな風に話しかけられるなんて、冷たい人間にはできないと思うけどね」

「なっ……聞いてたの……!?」

「うん。『大きくなったねー 』とか『 成長してるみたいでよかったよ』とか、楽しそうに話したよねー」

「…………」


ニヤニヤしながら言われて、私は俯いて黙ってしまう。恥ずかしすぎる。穴が入ったら入りたい。


「でもさ、さっきも言ったけど、猫には猫用のご飯をあげた方がいいよ。チーズとか、ツナ缶とか、塩分が高すぎて、あんまりよくないんだよ」


すると、中井くんが真面目な口調で説明しだした。私にとっては、とても意外な内容だった。


「ーーそうなんだ」


まったく知らなかった。猫のことは好きだけど、飼ったことはないから生態については詳しくなかった。

魚と牛乳が好き、というマンガやアニメに出てくる猫が好きなものを何も考えずに与えていた。