何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

トラ子の背中を眺めていたら、傍らからいきなり声が聞こえてきたので、私は死ぬほど驚いて変な声を上げてしまった。

声の主は、屈んで楽しそうにトラ子を眺めていた。私はその人物の登場に、ますます驚いてしまう。


「な、中井くん……!? どうしてここに……」

「さあ、どうしてでしょうか」


ひょうひょうとした様子で言う。唖然としている私には構わず、中井くんはご飯を食べているトラ子の背中を撫でた。


「俺が折原さんのストーカーだから、あとをつけてきた」

「え!?」

「なーんて言ったらどうする?」

「……え、あの、そ、それは」


訳のわからない冗談に、うまい返しができない。すると中井くんは、くくっと小さく笑った。


「この公園俺ん家の近くでさ。実は最近何度か折原さんがいるのを見かけたんだよね。で、今日も通りがかった時に姿が見えたから、何してんのかと思って。そしたら猫の世話をしてるとはねー」

「……意外?」


みんなにビビられてる私が猫の世話をしてることが。


「全然。だって優しいって知ってたし、折原さんのこと」