何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

ーーやっぱりそうだったか。分かっていたけどね。

言いづらそうに、しかし正直に言う横田さんが、なんだか面白かった。


「でも、本当は全然怖い人じゃなかった! 私の話も聞いてくれるし……ダメだね、人の噂で判断しちゃ。怖いどころか、すごく優しい」

「え……ありがとう」


はっきり言われ、私は照れてしまう。思わず目を逸らしてお礼を言う。


「ちなみに噂ってどんなの?」

「えーとね……地元では女番長だとか、暴走族のヘッドの彼女で、手下を顎で使ってるだとか……」

「はあ!? ば、番長って……いつの時代の話なの!?」


ーーなんていう根も葉もない噂だ。人の思い込みとは恐ろしい。


「あはは。よく考えたら、そうだよねえ」


横田さんが可笑しそうに笑ったので、私も釣られて笑ってしまった。

すると、横田さんは私に柔和な微笑みを向けて、こう言った。


「私、放課後だいたい花壇の手入れしてるんだ。また、話に来てくれたら嬉しいな!」


自分が受け入れられたことに、嬉しさがこみ上げてきた。


「え、いいの?」

「もちろん! むしろいつも孤独に作業してる寂しい子だからさあ。来てよ〜!」

「ーーうん」


私は微笑んで頷く。この学校に入学してから、初めで心から笑顔がで笑えた気がした。

そのあと、少しだけ雑草を抜く作業を手伝ってから、私はトラ子の様子を見に行くために、横田さんと別れた。

味気なかった学校生活に、一輪の花が咲いた気がした。