彼らは最愛の母親を半分失っている。それに私だって……大好きな悠を失いかけている。

大事な人を失いそうな者同士で、一緒に居た方がいいんじゃないか。

ーーいや、ダメだ。

気持ちが揺らいだのは、ほんの一瞬だった。

ダメだ、そんなことを考えては。諦めてはダメなんだ。私も……渉くんも、実くんも。

彼らは母親を信じて待たなければならない。ここで私が、彼らの母親を少しでも思わせるような存在になってしまったら、きっとすべてがダメになってしまう。

そして、私も。ここで渉くんに寄りかかってしまったら、元の悠は一生帰ってこない気がした。

ーー理屈じゃないんだ。信じて戦わないと、大切な人は、永遠に失われてしまうーーそんなふうに思えて。


「ごめんなさい」


私は強く意志を瞳に込めて、渉くんと視線を合わせた。そして、声に力を入れて言った。

渉くんは、しばらくの間無表情で私を見ていた。そして、私から目を逸らし、ばつ悪そうに微笑んだ。


「ーーそう言うと、思った」


どういう意味がわからない。なんでそれが分かっているのに、私に彼は思いを告げたのだろう。

しかし、次の彼の言葉はひどく腑に落ちるものだった。