何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

もし、私のお母さんが突然長い間眠りについてしまったら。最低でも5年間は起きず、その間は一緒に過ごすことができないと知ったら。

ーー私はきっと絶望の底に落とされてしまうだろう。

私だったら、渉くんのように、強く前向きな気持ちを持てるだろうか。

たった3ヶ月足らずで、気持ちの整理をつけられている彼に尊敬の念を抱いた。


「ーーだから俺は大丈夫なんだ。だけど、実は……」

「実くんは、このことを分かっているの?」


渉くんは首を横に振った。


「ずっと眠っているから、病気を隠すことは出来ないだろ? ちゃんと言ったことは言ったんだ。でも、5年っていうのがどれだけ長いのか、あいつにはわからないみたいで。『あと10回夜寝たくらい?』なんて、言ってる 」


実くんはまだ4歳。自我が芽生えて、まだ1年かそこらだろう。5年という月日が、どれほど長いものなのか、分かるはずがない。

だけど、実くんはそれを理解していない方がいい気がする。幼いあの子にとって、あまりにも残酷すぎるから。


「ーー他人に話したのは、桜が初めてだ。なんでかな……。きっと、桜が俺達の母親に、どことなく似てるからかもしれない」


渉くんが目を細めて実くんを見て、寂しそうに少し微笑んで言った。