何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

「……うん。行ってらっしゃい」


残念感と安堵感があった。悩みを誰かに打ち明けられそうだったことを阻止されてしまった残念感と。

目を背けなくなるような現実を言葉にしなくてよかった、という安堵感が。


「じゃ、またな。桜」

「ーーうん、また」

「おねーちゃーん、ばいばーい!」

「バイバイ、実くん」


渉くんが実くんと手を繋ぎ、ゆっくりと病棟へと向かう。ーー行ってしまうんだ。次、いつ会えるんだろう。

そんな風に、私が二人の背中を寂しく眺めていると。

渉くんが立ち止まった。そしてやおら振り返り、こう言った。


「俺達、明日もこの時間に来るから」

「え……?」

「だから……桜がよければ、明日会おう。ーー話そう」


渉くんはそれだけ言うと、私の返事も待たずに再び背を向け歩き出してしまった。

思ってもみない言葉だったので、驚いた私はしばらくの間ぼーっとしていたけれど、2人が病棟へ入ってしまう直前ではっとして、こう叫んだ。


「ーー渉くん! 私も、明日この時間に来るねっ!」


すると、渉くんは背を向けたまま、後ろ手に手を振ってくれた。実くんが振り返り、私に向かって無邪気に笑う。

ーー今日の悠の態度に打ちひしがられていた私だったけれど、2人のそんな姿には心が救われるものがあった。