何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

いまいち納得がいってないようだが、中井くんは渋々といった様子で折れた。

ーーだって、明らかに私のことだったじゃんね、あれ。

だけど、それにしても。


｢ーーなんで、あんなこと｣


私は小声で彼に尋ねる。別に放っておけばいいのに。彼にとって私はただの隣の席の女子。そんな私の印象が、どういう風に思われていようと。

すると彼は不満そうな顔をしてこう言った。


｢んー、だって違うし｣

｢何が……？｣

｢折原さんが怖いって、違うでしょ。あいつら何見てんだよって感じで｣


ーーどうして？

どうしてそんな風に思ってくれるのだろう。隣の席だけど、中井くんとはそんなに話したことないのに。

授業中や宿題で、彼のことを数回助けたくらいなのに。


｢ーーありがとう｣


私は小さく言う。顔を見て言えばいいのに、照れくさくて目を逸らしてしまった。

なんでそう思うのかも聞きたかったけど、そんなことを聞くのはうざいと思われてしまう気がして、聞かなかった。


｢いーえ｣


すると、中井くんはどうってことない様子で、のんびりとそう言った。

ほんわかとした嬉しさが込み上げてきた。

だけど、ここで1人そんなことを表情に出したら、ますます周囲に怖がられそうな気がしたので、必死に素知らぬ顔をするのだった。