ーーまあ、用意したと言っても、自分で作ったのは一部だけどね。


「あ、でもごめん。私が作ったの、卵焼きだけだよ。あとはお母さん作。前と同じだよ」


バツ悪く笑って、彼に真実を伝える私。

卵焼きもだいぶ形良く作れるようになったけれど、まだ他のおかずを作る余裕はなかった。


「え、そうだったの? でも卵焼きが1番うまかったよー」

「えー?嘘だー。お母さんが作ったおかずの方が絶対美味しいはずだよー」

「いやマジでほんとだから。多分桜の愛情が半端なく詰まってるから」


何気ない口調で、とんでもないことを悠は言ってのける。ーーいつもそうだ。

悠は、私が嬉しくて飛び上がりそうになるほどの言葉を、しょっちゅう与えてくれる。


「そ、そうかなあ? まあ、悠がそう思ってくれるんなら、いいけど……」


かくいう私は、恥じらいが邪魔をして無難な答えしかいつも返せない。まあ、これでも以前よりはだいぶ素直になれた……とは思う。


「うん、また食べたいな。卵焼き」