珍しく、自信なさげに中井くんが聞いてくる。想像もしていなかったことだったので、私は一瞬虚を突かれて目を見開いてしまった。
しかし、すぐに私は嬉しくなって、微笑んでしまう。
「ーーはい。もちろんです」
「よっしゃ……! ーーあ。じゃあ俺の事、悠って呼んでくれる……?」
「え……うん。しばらく慣れないかも、だけど……」
ずっと中井くんって呼んでいたから、もうその習慣が染み付いてしまっている。
大好きな彼を名前で呼べるのは嬉しいけれど、しばらく間違ってしまいそうだ。
「えー、なるべく早く慣れてね、桜?」
ーー桜。
大好きな声で初めて呼ばれた、自分の名前。それは今左手につけている指輪のモチーフにもなっている、花の名前。
結婚指輪もどきと、同じ私の名前。自分が桜という名前で、心からよかったと私は思えた。
「が、がんばる……」
「あはは、頑張れ。……ねえ、桜」
中井くんが私の顔をのぞき込む。その距離がやけに近い気がして、心臓が高鳴るのを感じた。
「大好きだよ」