何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

楽しそうな顔をして帰ってきた日。たぶん、詩織の園芸部の手伝いを最初にした日だろう。

確かに、あれ以降は詩織と仲良くなって、加奈ちゃんとも話すようになって。ーー中井くんとの仲もどんどん深まっていって。

蕾から花が咲くように、学校が楽しくなっていった気がする。


「ごめん……言ってなくて。お母さんに心配かけたくなかったんだ」


するとお母さんは頬を膨らませて、怒ったような顔をした。半分ふざけているのがわかったけれど。


「なーに言ってんの! 母親は子供の心配をするのが仕事なの! 私が心配しなきゃ誰が桜の心配するのよ、もう!」


大袈裟に、冗談交じりの口調でお母さんは言ったが、その言葉はきっと本心だろう。

今までだって、お母さんはずっと私を第一に考えてくれていた。

小学生のときに髪の毛の色で男の子にからかわれたときも、高校受験が不安で落ち込んでいた中学生のときも。悩みを打ち明ける前に、お母さんは私の胸の内をあっさりと暴いた。

看護師の仕事をしていて、家事もあって忙しいはずなのに。

そんなお母さんに、私の寂しさを隠しておくなんて無謀だったんだ。結局、心配をかけていたなんて。ダメだなあ、私。