厚い雲で覆われている、冬の空。




俺は由果と話をするために、待ち合わたのカフェに来ていた。



由果の連絡先はもう消して分からなくなっていたから、共通の知り合いに聞いた。



俺たちことについて深く聞いてこないあたりは、良い奴なんだけど。




由果が来たらどう話を切り出そうか、そんなことばかりさっきから頭の中を支配する。




そもそも来てくれるのか?




怖い、辛い、痛い。




でも、もう、自分の感情からも嫌なことからも逃げたくない。



そう思っていると、扉が鳴って由果が来た。



表情はマスクをしていて見えない。



「由果。」



名前を呼ぶと、マスクを取って俺の元に来る。




「ここか!どこにいるのか分からなかった!」




そう言って笑った顔はあの時と何も変わっていなかった。



「何か飲む?」




「じゃあ、キャラメルラテ!!」




店員に頼んで待っている間、俺達は普通の話をした。



学校はどうとか、テストはどうとか。




頼んでいたキャラメルラテと、俺の頼んだ抹茶ラテが来ると、俺は話を切り出した。




「由果、俺ずっと言いたいことあったんだけど。」




「うん、なに?」




「あの時、、、、本当にごめん。怪我させて。困らせて。だからずっと、ちゃんと、謝りたかった。」



もう一度ごめんと謝ると、俺は頭を下げた。




すると、頭の上からクスッと笑った声が聞こえる。




「律儀だなー、遙人は。頭上げてよ。」



顔を上げて由果を見ると、今までとはちょっと違う笑顔。




「私はずっとさ、遙人のことが好きだったんだよ。バスケしてる遙人も。ただ、あの時は子供だった。離れていくのが悲しくて、怪我したのだって自分のせい。、、、、、、何かに夢中になってる姿とか、頑張る姿、遙人のこと見ているのが楽しかったから。さっき、好きだったなんて言ったけど、嘘。遙人のこと、今でも好き。」




そう言って笑う由果。




今でも好きなんて、そんなこと絶対ないと思ってたし、内心びっくりしてる。




でも、俺のそばにいてほしい人は別の人なんだ。




めんどくさくて、運動バカで、不器用で。




ずっと、気になってしまうのは那美香なんだ。



「ありがとう、俺のこと好きでいてくれて。でも、由果の気持ちにはもう答えられない。だから、ごめん。」



「、、、、、、そっか。やっぱり遙人は、





自分勝手なんだね。」





え?







なに?






笑顔は同じなのに、目が全然笑っていない。