セナカアワセ

「でも、もし、笑われて、何か言われたら?」




「その親友は、その程度の仲なの?」




「違う!!栞里はちゃんと聞いてくれる。」




「うん。そうでしょ?私が思うに、喧嘩したこと話す前に親友に自分の気持ちを伝えることの方が先だと思う。大事な親友なら、真剣に喧嘩した子と仲直りする方法、考えてくれるんじゃないかな?」



そう言われて、栞里のことを思い出す。



いつも栞里は何かあったら相談してねって言ってくれた。



その言葉をもっと、信じれば良かった。



そう思うと、心の中のモヤモヤが少し晴れたように、軽くなった気がする。



「、、、ありがとう、先生。話してみます。それでちゃんと、仲直りしたい。また、あの時と同じなんてこと、絶対起きない、ですよね?」




そう言うと、先生は大丈夫と言って笑った。



「過去なんて、いつまでも囚われるものじゃないよ。ちゃんと話しておいで!!【白雪の ところもわからず 降りしけば いはほにもさく 花とこそ見れ】なんてね!言い終わってから、そう見えたらいいね。」




行ってきなと先生に背中を押されて私は教室を飛び出した。



走りながら、さっきの和歌を思い出す。



【白雪の ところもわからず 降りしけば いはほにもさく 花とこそ見れ】



古今和歌集に入っている、紀秋岑(きのあきみね)の歌。


雪が場所も選ばず降り積もったので、大きな岩にも白い花が咲いたように見える。



そういう歌なんだけど、きっと先生が言いたいのは、



私が、過去のことを話すのはいつだって、どこだって関係ない。



話して、スッキリしたら、自分の周りのことにも目がいくようになって、今降っている雪が花みたいに輝いて見えたらいいね。




心に余裕を取り戻せたらいいね。




たぶん、和歌の意味と私の問題をつなげて、そういう意味で言ったんだと思う。