「開けて! 開けてよアケミ!!」


「落ち着いて千夏! トイレの鍵はそんなに複雑じゃないよ!」


大声でそう言うと、千夏がまた鍵を開けようとする音が聞こえ始めた。


トイレのドアは鍵を縦に回すだけで開く。


それが開かないなんて……。


悪い予感が胸をよぎった。


「人形って……まさか……」


そう呟き、アケミは一度リビングへと向かい、棚の上に置かれている貯金箱を開けた。


中から10円玉を一枚取り出し、トイレへと戻る。


「開けて! 開けて!!」


千夏の悲鳴はかすれ始めている。


「今開けるから!」


アケミはそう言い、鍵のくぼみに10円玉を差し入れた。


それを縦に回すとカチッと音がする。