「千春……おい、千春。」
 「ぅん………あ、あれ……。」
 「やっと起きたか……。」
 「あれ?秋文なんでここに……。」
 「帰ってきたよ。いつまで寝てるんだ。」


 千春はうたた寝をしていたソファから起き上がり、ぼーっと秋文を見つめた。
 結構な時間寝ていたのか、もう外は暗くなっている。
 少しずつ頭を働かせて、寝る前に何をしていたのか思い出そうとする。


 「おまえ、まさか監督の会見の時まで寝てたわけじゃないよな?」
 「会見………あっ!!会見見たよっ!秋文………あれって………。」


 千春が、会見の内容を思い出して彼をまじまじと見つめる。
 すると、秋文はにっこりと笑って「あぁ。」と嬉しそうに笑った。


 「監督がいろいろな人と話し合ってくれてたみたいで……日本代表もリーダーも続けられることになったよ!」
 「よかったぁ………。よかったね、秋文!」
 「まぁ、自分で何にも出来なかったのはカッコ悪いけどな。」
 「そんなことないよ、監督とか仲間が認めてくれてるって事は日頃、秋文が頑張っているからだよ。………私は、そっちの方が大変ですごい事だって思うよ。」
 「あぁ……そうだな。」


 秋文は、千春の隣に座ってよしよしと頭を撫でてくれる。


 「さっき、監督にお礼を言ってきたよ。そしたら、早く奥さんのところに行って安心させてあげなさい、って言われたよ。」
 「ふふふ……優しい監督なのね。」
 「見た目は怖そうだけど、実はそうなんだ。」
 「秋文ったら………。でも、本当によかった。これで残りの時間も思いきりサッカーが出来るって事だよね。」
 「あぁ、そうだな。」


 千春は、嬉しさのあまりに秋文に抱きつく。
 また、秋文が大切にしていた場所でキラキラと輝く笑顔と、真剣な表情でピッチを走る秋文が見れるのだ。
 それが何よりも千春の楽しみなのだと思う。


 「早く秋文の試合、見に行きたいなー。」
 「何だよ、最近沢山来てくれるようになっただろ?」
 「今すぐに秋文がサッカーしてるところ見たいの。あと、日本代表のリーダーしてるところも!………楽しみだなぁー。」


 千春は、それを思い浮かべてはニコニコして上を向いてしまう。
 けれども、それは彼によって阻まれてしまった。
 顔を両手で包まれて、視線を彼の方に向けるように顔を固定される。