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 「はぁー……やっちゃったなぁー……。」


 千春は、そう呟くと職場の天井を見つめたあと、ゆっくりと目を瞑った。
 眩暈のせいか、目を開けるとぐるぐると視界がまわり、気分が悪くなってしまうのだ。


 千春が倒れたあと、すぐに出勤してきた男性社員が助けてくれたのだ。
 すぐに目覚めて、自分で立ち上がろうとしたけれど眩暈で立ち上がれずに、救護室で横になっていたのだ。
 同じビルに病院が入っていたので、診てもらうと「疲れからくるものだろう。」と言われてしまった。

 千春はのろのろと職場に戻り、診断結果を上司に伝えた後、目眩が落ち着くまで休ませてもらう事になった。
 自宅まで送ると言われたけれど、これ以上迷惑は掛けたくなかったので、大人しく医務室で仮眠をとることにした。


 自分の都合で仕事のスタイルを変えるのに、会社に迷惑を掛けてしまった。自分の体調管理がなっていなかったのだと、反省した。

 秋文には倒れた事を伝えないつもりだった。
 彼に言ってしまえば心配をかけてしまう。きっと寝ればよくなるだろう。疲れからだというのなら、今日は早めに寝れば回復するはずだ。
 千春はそう考えていた。



 千春がウトウトしてきた時だった。
 廊下から人の声が聞こえた。ザワザワと人が集まっている声や、時々女性の歓声も聞こえた。
 千春は、頭がボーッとしたまま「何かあったのだろうか?」と考えながらも、またゆっくりと目を瞑った。千春自身が思っているよりも体は疲れているようだった。


 コンコンッ。


 千春が寝ている部屋のドアをノックする音が聞こえた。


 「はい。」
 「一色さん。入るよ。」


 ドアの外から聞こえて来たのは、上司の声だった。
 千春は体を起こしてから返事をすると、ゆっくりとドアが開いた。