「あ、あった」
窓際にあるテーブルに、着ていた服と私のバッグが置かれているのを見つけた。
「よかった。川岸で私を拾ったって言ってたけど、荷物もちゃんと持ってきてくれたんだ」
ベッドから起き出しさっそくそれらを確認する。
スーツは泥で汚れてしまっているけれど、水に濡れた形跡がない。バッグも同じだった。
確かに一緒に川に沈んだはずなのにと不思議に思うけれど、タイムトリップの前では些細な問題だと考えるのをやめる。
バッグの中は少しさわられた形跡があったけれど、まあ仕方ないだろう。見知らぬ人物を助けて屋敷に運ぶのに、怪しい物を持っていないか確認くらいするのは当然だ。
けれど特に何か壊れたりなくなったりしている様子はないので安堵する。コスメもタブレットもスマホも無事だ。
(でも、この時代にスマホやタブレットがあってもなあ。ネットに繋がらないんじゃ、あんまり意味ないかも。充電もできないし)
せっかく無事だったけれど、現代日本を懐かしむくらいしか役に立ちそうにない。少し落胆したけれど、バッグの奥にいいものを見つけ私は顔を輝かせた。
「これって、ちょっと役に立つかも……?」
それは、電子辞書。しかもソーラーバッテリー付き。
ソーラーバッテリーだけでは普通の充電に比べると頼りないが、ないよりはずっとマシだ。
私はさっそく電源を入れ、バッテリー残量を確認してからメニュー画面を開く。



