国際会議というのは硬と柔だ。

テーブルを囲んで険しい顔で意見を交わすだけが外交ではない。晩餐会や舞踏会、夜会など和やかな空気の中でこそ作れる関係というものがある。

その辺は、今も昔も変わらないなとも思う。

元の世界でも取引先との打ち合わせには接待や会食は必須だった。美味しいものを食べてお酒を飲んで気分がリラックスしたときにこそ、話し合いの活路が見出せることはしばしばある。

そんなことを思い出しながら、私は豪華絢爛なパーティー会場を眺めていた。

各国の要人、大使、使節団はもちろん、秘書官や侍従や私のような補佐的な人達もいるため、会場は大賑わいだ。テーブルに並んだワインやパンチ、レモネードなどがあっという間に消えていく。

あちこちから明るい声が聞こえる会場で、とくに盛り上がりを見せる一角があった。

「パルマ公がウエリントン将軍を破ったぞ」

そんな声があがり、周囲がわっとざわめく。

人に囲まれた中心にいるのは、扇で口もとを隠し上品に笑う女性と軍服を着たおじ様だ。