玄関ホールの前まで送ってくれた少年は、礼を言って頭を下げた私の手を両手で掴んで言った。

「ねえ、また会える? あんたともっと話がしたいんだ。まだしばらくホーフブルクにいる?」

別れを惜しんでくれる姿が愛らしくて、私はまたしても胸をキュンキュンといわせながら必死に落ち着いて笑みを浮かべた。

「今週は宰相官邸にいる予定です。そのあとは夏季に入りますからしばらくは会えなくなるかもしれませんが、秋には戻りますから。また必ず会えますよ」

「約束だぞ、絶対だよ」

名残惜しそうに青い瞳で見つめる少年に、私は自分の小指をそっと差し出した。