元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

 
まあ確かに。歴代のハプスブルク家でもこの皇帝ほど苦難の連続だった人もなかなかいないだろう。

十六年前まで、このヨーロッパには神聖ローマ帝国という国が存在した。オーストリアを盟主国として、幾つもの領域を統括した国で、国家連合的な大国だった。その神聖ローマ帝国の君主を代々務めてきたのが、名門ハプスブルク家なのだ。

けれど十六年前、ナポレオンとの戦いに負けた神聖ローマ帝国は解体され消滅してしまった。そのとき最後に神聖ローマ帝国の玉座にいたのが、このフランツ一世皇帝陛下だ。


ナポレオンとの大戦で何度も敗戦し、領土を奪われ、娘も奪われ、九百年の歴史を刻んだ神聖ローマ帝国まで解体され……国家君主としての苦悩は計り知れない。

ナポレオンがいなくなりようやく安堵の息をついたものの、今は各地の革命に手を焼く日々だ。そりゃあ慢性疲労も身体に染みついているというものだろう。

(栄養ドリンクでも差し入れてあげたいな)

それが、私がフランツ一世陛下に初めて謁見したときの感想である。