「従軍したこともない僕が言うのもおかしな話なんですが……もし僕がオーストリア軍の兵士だったら、幸福だと思います。ヨーロッパの平和のために従事できることも光栄ですが、もし命を落としたとしてもラデツキー将軍閣下のような素晴らしい上官に花を手向けられその働きを認めていただけただけで……僕の御霊は救われると思います」
平和な日本で生きてきた私に、大義名分があろうと命を懸けて戦う意味は理解できない。けれどもし、そうならざるを得ないのならば――せめて有能な人に着き従い、最後はその働きを認められたいと思う。
私がそう考えるのはきっと、元の世界でそれが叶わなかったからだ。
身を粉にして尽くし働いたというのに、最後に私に残ったものは感謝でも称賛でもなく、冤罪という裏切りだった。
結果的にこうして異世界にトリップできたからよかったものの、あのまま川で溺れ死んでいたら私の魂は絶対に浮かばれなかったに違いない。
それに比べてラデツキー将軍のなんと情深く正義感の強いことか。戦争も戦死も絶対に嫌だけど、立派な上官にここまで真摯に悼んでもらえれば、救われる心がきっとあるのではないかと私は思う。



