「あの……お隣に座らせていただいてもよろしいでしょうか?」
私が近くに来ていたことに気づいていなかったのだろう。ラデツキー将軍は一瞬驚いた表情で顔を上げると、私の顔を見て「ああ、あなたか」と呟いた。
「いや、私はそろそろ行く」
そう言ってラデツキー将軍は腰を浮かしかけたけれど、少し何かを考えると思い直したのかベンチに再び腰を掛ける。そして自分の隣をポンポンと手で叩いて、私にここへ座れと促した。
「あなたとは少し話したいと思っていた。いくつか質問をしても?」
「僕に答えられることでしたら、なんでも」
ラデツキー将軍の隣に腰掛け、深く頷く。
「あなたは軍に従事したことがないと聞いたが、本当か?」
「はい。日本では対外戦争は何百年もありませんし、今は国内の領土争いも起きていませんから」



