「あ、すみません。ちょっとダンスの練習を……」
焦って足を隠そうとしたけれど、クレメンス様はまっすぐこちらに歩いてくるとしゃがみ込んで私の足首を掴んだ。
「私は練習をしろとは言ったけれど、無理をしろとは言ってないぞ」
「はい……」
呆れたような口調に、思わずシュンとしてしまう。足をこんなにしてまで上達しないだなんて、格好悪すぎて見られたくなかった。
その日はもう練習を続けてはいけないと言われた。というか、怪我が治るまでは練習禁止と言い渡されてしまった。従僕の人に足を治療してもらい、おとなしく部屋へと戻る。
(このままじゃいつまで経っても上手くならないし、足も痛くなるばっかりだ。まさか、こんなことで躓くなんてなあ……)
自分の人生でダンスができなくて落ち込む日がくるなんて、夢にも思わなかった。
自分の不甲斐なさに落ち込みながら眠りについた、その翌週のことだった。私の部屋にある荷物が届いたのは。
「これって……?」
従僕の人が部屋に届けてくれた箱には、柔らかい山羊皮でできた特性のオペラパンプスが絹に包まれ入っていた。



