椅子から立ち上がった私は彼をまっすぐ見つめ、口を開く。
「クレメンス様にとって私は……何でしょうか」
真剣に尋ねた私の姿は、彼の目にどう映っているんだろうか。
同士? 敵? あるいは、利用するための存在? それとも――。
「可能性だ」
クレメンス様はためらうことなく、そう言った。
「可能性……?」
聞き返した私に向かってはっきりと頷くその姿からは、口先の偽りもごまかしも感じられない。
「ツグミがアウトサイダーであることは初めて会ったときから分かっていた。ドナウ川から助け屋敷に連れ帰ったのは、まだトリップしたばかりのきみを哀れに思ったからだ。けど、私に向かって秘書になりたいと願い出たツグミを見て、なんて面白いやつなのだと胸が弾んだよ。この世界に来てわずか三日で自分の生きる道を決めたきみが、この先どうなっていくのか知りたかった。私と志を分かち合える同士になるのか、それとも立ちはだかるライバルになるのか。あるいは……かけがえのない存在になっていくのか。きみは私にとってすべての可能性を持ち得た、特別な存在だ」
「……特別な、存在……」
それは、私にとってのクレメンス様と同じだ。
憧れで尊敬で恩人で、けれども違う正義を持つライバルで、そして――恋する人。
さっきまで緊張していた気持ちが解けて、心がフワリと柔らかくなる。



