ナポレオンから聞かされた信じがたい事実を、私の心はまだどこか受けとめきれていない。
特にライヒシュタット公が十八歳の若さで命の灯火を燃やし尽くしたことが、胸の中で渦巻く疑念や悔恨に拍車を掛けていた。
私がもっと早くアウトサイダーのことを知っていれば、クレメンス様も同じだということを知っていれば。もしかしたらライヒシュタット公を救う手立てがあったのではないか。
もっと違うやり方でヨーロッパに平和をもたらし、あの子から両親を取り上げることもなく王宮にも閉じ込めずに済んだのではないか。ギリシャの王座につかせて存分に才能を振るわせてあげられたのではないか。
そんな後悔は日々私の中に降り積もって、呪いのように心を締めあげる。
燻った思いを抱えどうしようもできないまま月日は流れ、季節は冬を迎えていた。
ゾフィー大公妃が産気づいたのは、降誕祭も終わった年の瀬のこと。
たいへんな難産で医師も慌てふためく中、彼女は取り乱すことなく、ただ子を産むことだけに注力した。
そして長い分娩の果てに――玉のような男の子を産みとした。
雪のチラつく、早朝のことだった。
待望の未来の皇帝の誕生に、シェーンブルン中が歓喜の声に沸いた。けれど――真っ白いレースのついたおくるみにくるまれ大公妃の胸に抱かれた赤ん坊を見て、私は密かに驚愕する。
(……黒髪……?)



