元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

 
四ヶ月の旅路を得てウィーンに戻ったとき、季節は夏に変わっていた。

七月二十二日。
昨夜からの嵐は治まり、雲の隙間から差す日の光が濡れたウィーンの街にキラキラと反射していた。

シェーンブルン宮殿を囲う樹々は緑濃い葉を雨露に輝かせ、私の目に鮮やかに写る。

清々しいほどに鮮烈なこの光景を、私はきっといつまでも忘れないだろう。



「ライヒシュタット公爵閣下がお亡くなりになりました」

シェーンブルン宮殿で私を出迎えた侍従長は、挨拶より労いより先にその言葉を告げた。

そして私の手に持ったナポレオンからの返事が入った箱を見て、無念そうに俯いた。

今朝の午前五時過ぎのことだったという。――私の知っている歴史より、ぴったり三年早い逝去だった。

ライヒシュタット公が待ち望んでいた返事を持って帰ってきた私を、誰もが悲しみを浮かべた眼差しで迎えた。

彼の部屋の前には大勢の人が集まっていた。侍従長の案内で行くと皆道を開け、私を中に通してくれる。

日がよく射し込む寝室は明るくて、雨上がりのキラキラとした空気が窓越しにも満ちているようで。そんな光の中で眠るライヒシュタット公の顔は、本物の天使のようだった。