「お会いしてくださってありがとうございました。陛下に神様のご加護があらんことをお祈りいたします」
お礼を告げて部屋から出ようとしたとき。
「俺がしてやれなかった分、あの子に優しくしてやってくれ。それじゃあ、またな」
ナポレオンは最後にそう言った。
その〝またな〟に籠められた意味は、未だ信じ難くて受け入れたくないけれど、息子への愛情を託した言葉は偽りなく尊くて、私は出口で最敬礼をしてから扉を閉めた。
帰りの旅が行くときよりもずっと短く感じられたのは、考えることが沢山あったからだと思う。
自分はただこの世界にトリップしたのではなく、永遠に生き続けなくてはいけない運命を背負っていたこと。私と同じ〝アウトサイダー〟が他にもいたこと。アウトサイダーは既存の他人に成り代わる術を持っていること。
そして……ウィーンに、私のすぐ近くに、アウトサイダーがいたこと。
ナポレオンの言ったことを頭の中で繰り返し、キュッと唇を噛みしめる。
自分はこれからどう生きて行けばいいのだろうか、永遠の命なんか抱えてしまって。
愛する人たちが歳をとり寿命を全うし世界が移ろっていく中、まるで取り残されたように生き続けなければならないなんて、あまりにも残酷過ぎる。
そのことだけでも悪夢を見ているようなのに、さらに私を絶望の淵へ追い込む事実がつらかった。



