クレメンス様は皇帝陛下のサインが入った面会許可証も持たせてくれたので、私はさっそく島の総督にそれを渡してナポレオンへの接見を願い出る。
けれど……案内されてやって来たのは屋敷の広間などではなく、教会の地下から続く牢獄だった。
(なんでこんなところに……)
ナポレオンは島送りにされたとはいえ、元皇帝だ。牢に繋がれるような扱いはされないはず。
妙な違和感を覚えながら、私は先導する不愛想な総督の後をついていった。
「こちらです」
蝋燭の灯りしかない闇の中、見張りがふたりも立ち二重に鍵のかかった扉が開かれ、私はゴクリと生唾を呑み込む。
……あの伝説のナポレオンをついにこの目で見ることができるのだ。
今まで歴史に名を遺した人物とたくさん会ってきたとはいえ、やっぱりナポレオンは別格だ。二十一世紀でもその知名度はとびぬけているし、十九世紀に来てからも彼の残した爪痕の大きさは何度も体感した。
いったいどんな人物なのだろうと胸が逸る。緊張で汗に濡れた手を握り込みながら、私は牢の前まで足を進み入れた。



