「――手紙を……手紙を書きませんか?」
「え?」
ふとひらめいた私の言葉に、ライヒシュタット公だけでなくゾフィー大公妃も目を丸くする。
「僕がセント・ヘレナ島まで届けに行きます。そして必ず返事をもらってきます。お父様に伝えたいこと、教えたいこと、全部全部書いてください。届けましょう、ナポレオン陛下に!」
ライヒシュタット公は母親のパルマ公とは手紙のやり取りをしている。本当は直接会った方が良いのは当然だけれど、手紙だからこそ紡げる親子の絆というのもあるのだ。
直接会えなくともせめて手紙をと提案した私の言葉に、ライヒシュタット公の瞳が活き活きと輝き出すのが分かった。
「か……書く! 書くからちょっと待って! うわぁ、お父様に手紙だなんて思いもつかなかったよ。何を書こう、やっぱり僕が軍人になったことかな。あ、ゾフィー、便箋用意してくれる?」
想像以上の彼の喜びように、ゾフィー大公妃の顔まで嬉しそうに綻んでいった。
「もう、フランソワったら。慌てすぎよ! ツグミだって準備があるんだからすぐには行かないわ。お手紙は時間をかけてしっかりお書きなさいな」
秋の日射しが差し込む寝室に、明るい笑い声が満ちた。
「ありがとう、ツグミ。やっぱあんた、僕の友達だよ」
そう言って煌めくように笑ったライヒシュタット公はまるで天使みたいに美しくて。
ああ、私はこの笑顔が見たかったんだと、心から感激した。



