「そうだなあ、他には……またプロケシュ少尉に会いたいかな。今、イタリアは騒がしいらしいけど、元気にやってるかなあ」
「分かりました。私から彼に手紙を書き、宰相閣下にもお願いしてみます。他には?」
「……お父様とお母様に会いたい。けど、無理かな。お母様は今とてもパルマを離れられないだろうし、お父様にいたっては……」
言葉をつぐんで、ライヒシュタット公は悲しそうに笑う。
ただ両親に会いたいと願うことが、どうしてこの子にとってはこんなにも叶わない願いなのだろう。
「お父様にもう一度会ってみたかったなあ。僕の記憶ではすごく凛々しい方だったんだ。一度だけでいい、お父様に会ってたくさん話がしたかった」
ずっとずっと憧れていた英雄、ナポレオン。その軍服姿の背を追いかけ続け、少しでも追いつきたくて軍人として鍛錬を積んだのに、指の先すら届かなかった遠い遠い存在。
彼をナポレオンに会わせてあげたならば、どれほど喜ぶだろうかと思う。
けれど、ナポレオンは今、絶海の孤島セント・ヘレナ島にいる。当然連れてくることなどできないし、そもそもヨーロッパの地を踏むことすらできないだろう。
だからといってライヒシュタット公をセント・ヘレナ島へ連れていくこともできない。島へは船で三ヶ月も掛かるのだ。病床にある彼の体力ではとてももたないことは明白だ。



