謁見の間で皇帝陛下にそう提案した私に、返事をしたのは玉座の隣に立つクレメンス様だった。
「なりません、陛下。今、イタリアにライヒシュタット公爵閣下を送ることは大変危険です」
イタリアは今、マッツィーニ率いる青年イタリアという革命軍が気炎を上げている真っ最中だ。以前たやすく鎮圧された革命軍とは違い、広範囲で計画的な暴動を起こすなど大掛かりな力が動いている。
確かにそんな情勢が不安なところへライヒシュタット公を行かせる訳にはいかないだろう。けれどまさか革命軍も病気の療養にきた彼を担ぎ上げるような真似はしないはずだ。……しないと願いたい。
「でも、公爵閣下の病気は日に日に悪化しております。いますぐにでも転地保養をしなければ、手遅れになりかねません」
「イタリアのデモ隊は、各都市のオーストリア政府の退陣を要求している。弱っている王子など格好の人質として囚われかねない。きみはそれを望むのか」
「じゃあどうすればいいんですか!!」
皇帝陛下の御前だというのに、感情が抑えきれず喚いてしまった。
何もできない自分が、ほんの少しでもライヒシュタット公を楽にしてあげられない自分が、情けなくて悔しくて仕方ない。



