ラデツキー将軍の行動は意外だったけれど、それだけ私のことを本気で心配してくれていた気持ちが伝わった。
きっとクレメンス様も将軍のそんな実直な性格を分かっているはずだ。恨んだり怒ったりなんかしていない。
ラデツキー将軍は私の言葉を聞いてどこか安心したように微笑んだ。それから手を伸ばして私の頭を撫でようとして、一瞬ためらって、けれど私が微笑むと少し恥ずかしそうに笑って頭を撫でてくれた。
「私はこれからもずっとあなたの味方だ。困ったことがあったらいつでも頼りなさい」
最後にそう告げてくれた言葉が、嬉しかった。
翌週。
ゲンツさんが仕事に戻ったことを知り、私はホッとした。
けれど、王宮で顔を合わせることがあっても彼は私と目を合わさない。こちらから挨拶をしても、黙ってしらんぷりされてしまう。
正直悲しいけれど、やっぱり仕方ないとも思う。ゲンツさんとはそれだけ師弟として長くて濃い時間を過ごしたのだ、彼の中で気持ちの整理がつかないのも当然だ。
(いつかまた……前みたいに一緒に食事やカジノへ行けるような仲に戻れたらいいな)
今はそう願うしかなかった。たとえ叶わないとしても。



