元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

 
「どうぞ、未熟な行政官として扱ってください。今までと何も変わりません。……というか、どうか今まで変わらず扱ってください」

それが本音だった。私は夫人として扱われることなどこれっぽっちも望んでいない。むしろ夫人扱いされて今までの功績や人間関係が無駄になってしまうことの方が恐ろしい。

「そうか。ならば、そう努めよう」

微かに目を細めて言ったラデツキー将軍を、紳士だなあと思った。

彼も心の中では色々思うことがあるはずだ。けれどそれを表には出さず、相手の意思を尊重してくれるのは本当にありがたい。

「助かります」と微笑み返して言うと、ラデツキー将軍はにこりと口角を上げた後、口もとに手を当てしばらく黙ってしまった。

そして私から目を逸らし、今度はどこか気まずそうに口を開く。

「実は……あなたが女性で既婚者だと発覚したとき、私は宰相閣下を殴ってしまった」

「えっ!?」

突然打ち明けられた話に、私は驚きで目を剥いたまま固まる。