……私が聞きたかったメッテルニヒさんの意図を、自分で考えろってことか。
でも私、まだウィーンのことも宰相秘書官のこともよく分かってないしなあと思いながらも、必死で頭を回転させる。
「……宰相秘書官になるには皇帝陛下の承認が必要だけれど、秘書官の弟子ならばそれが必要ない……ということですか?」
推測を口にすると、メッテルニヒさんは浅く一度頷いた。合ってはいるけれど、まだ足りないらしい。
「……ゲンツさんの弟子として活動しているうちに政界で顔を広め、機を見て皇帝陛下に紹介していただき、正式な秘書官になる……というのが、メッテルニヒさん……じゃない、宰相閣下のお考えでしょうか」
頭を捻ってそう答えると、メッテルニヒさんは作った笑顔をにっこり浮かべてパチパチと手を叩いた。
「うん、推論する能力は悪くないようだね。まずは合格だ」
どうやら正解だったようだと安心すると共に、試されていことに気づき背筋が伸びる。その瞬間、彼の青い瞳がしっかりと私を捉えた。
……やっぱり、大帝国の宰相って伊達じゃない。この人、私の挙動を観察し能力をさりげなく計っていたんだということに、今さら気がついた。
緊張感が身体に走りこめかみに汗が伝ったとき、メッテルニヒさんは私の緊張を解くように瞳を伏せて窓枠に軽く凭れ掛かった。
「本当は半分正解と言ったところだけど、きみはまだウィーンに来て日が浅いからな。特別にもう半分の答えを教えてあげよう」



