開けられた扉の前には、クレメンス様がにっこり穏やかに微笑んで立っていた。ゾフィー大公妃は顔を上げ、そんな彼を射殺さんばかりに睨みつける。
「ツグミは私の側近よ。彼女の怪我の具合はこれから私が見るわ」
「それはそれは恐れ入ります。しかし皇帝陛下は、妻の療養は夫の責任と仰られました。引き続き私がツグミの面倒を見るのが正しいかと」
一触即発の雰囲気を感じ取って、私はソファーから立ち上がりすかさずふたりに間に割って入る。
「あの、あの、とりあえず診察を受けてきますから。えっとそれから、もうずいぶん元気になったので、大公妃殿下のお手も宰相閣下のお手も、もうお借りしなくて大丈夫だと思います。おふたりのご厚意に感謝します」
そしてふたりをそれぞれ部屋の中と外にグイグイと押しやると、「では、診察後にまた来ます!」とゾフィー大公妃に言い残して、廊下から扉を閉めた。
「……わ、私がクレメンス様の妻って一体どういうことですか」
宿舎の自室にクレメンス様と戻ってきた私は、診察を終えた医師が部屋から出るなり直球で疑問をぶつけた。
クレメンス様は自らの手で紅茶を淹れるとカップをひとつ私の前のテーブルに置き、自分もソファーに座って紅茶をひと口飲んだ。



