本宮殿三階のハプスブルク家の住居まで行き、侍従に大公妃殿下への謁見を取り次いでもらう。しかし、さすがに三階まで階段を登るのは骨に響いて痛かったと少し後悔した。
てっきり侍従が戻ってくるものだと思って廊下に立って待っていた私は、廊下の奥からゾフィー大公妃が転げんばかりの勢いで走ってきたのを見て、目をまん丸くした。
「ツグミ! 怪我は大丈夫なの!? ああもう、どれほど心配したと思っているのよ! あなたって人は!」
「いだっ、いたたたたっ!」
駆けてきたゾフィー大公妃にがっちり抱きしめられ、私は痛みに顔を歪める。
ゾフィー大公妃は「あら、ごめんなさい」と言ってすぐ離れてくれたけれど、その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
私を本当に心配してくれていたその姿に、こちらまで胸が熱くなる。
「ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした。今日から職務に戻ろうと思います。無断で数日お側を離れてしまい、大変申し訳ございませんでした」
ところがゾフィー大公妃は涙をハンカチで拭うと、どうしてかとても不満そうな表情を浮かべた。
「無断じゃないわ。あなたに代わって怪我の状況と休暇の申請をちゃーんと伝えにきたもの。――あなたの夫が」
「……ん?」
よく分からない単語が飛び出したような気がして、私はパチパチと目をしばたたく。



