元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

 
鎮痛剤を飲みながらもひどい痛みは治まることがなく、ようやく薬なしでもいられるようになったのは骨折から一週間が経ってからだった。

無理をしないように気をつけながらも、部屋で久々に湯浴みをし髪を梳いた。サッパリすると、やっと生きた心地がした気がする。

痛みでほとんど動けなかったのと発熱もあったせいで、この一週間医師とクレメンス様と、身の回りのお世話をするために来てくれたマリアさん以外の人と話していない。

私が女だとバレてしまったことはどうなったのか、怪我をしたことはゾフィー大公妃の耳に届いているのか、色々気がかりだったけれどクレメンス様は「今は余計なことを考えるな」と言うばかりで何も教えてはくれなかった。

(少し動けるようになったし、部屋の外に出てみようかな)

マリアさんは「まだ安静にされた方が」と眉を顰めたけれど、大公妃殿下に何日も仕事を休んでしまったことを早くお詫びに行きたいのだと説明したら、渋々ながらも身支度を手伝ってくれた。

……しかし。部屋を出て本宮殿へ向かう途中、すれ違う人達の視線があからさまに突き刺さる。本宮殿の玄関ホールに入るときも、いつもなら何も言わず通してくれる衛兵の人達が困ったように顔を見合わせ、「仕方ない」といったふうに通してくれた。

(この反応……なんか、すごく嫌な予感がする)

私が女だとバレたとき、部屋には医師と助手、ゲンツさんとラデツキー将軍の他に何人かの従僕がいたようだった。

誰がどんな状況で言ったかは分からないけれど、周囲の反応を見るに私が女だったという情報がすでに広まっているとしか思えなかった。