「痛みは強いが肺に損傷はないようです。鎮痛剤で大丈夫でしょう。じきに呼吸も整う。安静が大事です、身体をなるべく動かさないように」
治療を終えそう説明した医師に、クレメンス様は「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をした。
「どんなご事情があるか知りませんが、私は医師です。患者の身体について詮索や他言しない義務がある。けれど宮廷医師である以上、陛下や王族の方々の尋問には答えなければなりません。そこはご理解ください」
最後に医師はクレメンス様にそう言い残し、助手を連れて部屋から出ていった。
シンと静まり返った部屋には、私の荒い呼吸の音だけが響く。
クレメンス様はベッドの脇まで来ると椅子に腰を下ろし、私の額に滲んだ汗をタオルで拭いた。
「痛いだろうがじきに鎮痛剤が効いてくる。大丈夫だ」
そしてもう片方の手でそっと手を握ってくれた。
迷惑と心配をかけてしまった不甲斐なさ。ゲンツさん達に正体がバレてしまった不安。それに痛みと呼吸の苦しさが加わって、私は情けなくベソベソと涙を零す。
クレメンス様はそんな私の涙を優しく拭いながら、鎮痛剤が効いて眠りに落ちるまで側にいてくれた。



