元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

 
そのときだった。

「医師と助手以外はこの部屋から出たまえ。ゲンツ、ラデツキー将軍、あなた達もだ」

ピシリと厳しい声が部屋に響き渡り、皆の視線が入口に立つ人物へと向けられた。

「メ、メッテルニヒ! ど、どうなってるんだこれ――」

困惑しているゲンツさんの声に構わず、クレメンス様はツカツカとベッドまでやって来ると自分の着ていた上着を晒されたままの私の胸にかけた。

そして手首を掴んだまま呆然としているラデツキー将軍の手を離させ、もう一度厳しい声で言う。

「聞こえなかったのか。部屋から出ろと言っているんだ。治療が遅れてツグミが命を落とすようなことになってもいいのか」

今は治療を優先させるべき緊急事態だということを思い出したのか、ゲンツさんとラデツキー将軍はハッとして私のそばを離れ、そのまま部屋を出ていった。

扉が閉められ室内が静かになると、クレメンス様は医師に「診察を続けてください」と言って、少し離れた場所に移動した。

医師も最初は戸惑った様子を見せていたけれど、そこはプロなのだろう。すぐに冷静に診察を始め、肋骨が二本折れていると診断した。