道に突然飛び出してきた子供をよけようとして、私は思いっきり手綱を引っ張った。
馬は激しく嘶き前足を上げて立ち上がり、私はその勢いのまま背から振り落とされてしまう。
「ぐ……っ!!」
地面に思いきり胸を打ちつけ、息ができなくなる。あまりの痛みに霞んでくる視界に、無事だった子供の姿と「ツグミ殿!」と叫んで駆け寄ってくるラデツキー将軍の姿が見えた。
ラデツキー将軍は近くを走っていた辻馬車を拾い、私を王宮まで運んでくれた。そして王宮に着くと人手を呼んで私を担架に乗せた。
「静かに運ぶんだ。肋骨が折れていたら肺に刺さる可能性がある」
冷静に指示を出すけれど、彼の声にはらしくない焦りの色が滲んでいる。心配をかけてしまって申し訳ないと伝えたいのに、私は胸の痛みで声すら出すことができなかった。
「どっ、どうしたんだツグミ!!」
行政官の宿舎に運ばれる途中で、ゲンツさんの叫ぶ声が聞こえた。偶然遭遇したのか、騒ぎを聞きつけてきたのかは分からないけれど、ずっと担架に付き添ってくれている気配がする。
「急いで医師を」
宿舎にある私の部屋に入ると、身体をそうっとベッドへ移された。従僕らが治療の準備をしているのか、室内がバタバタと騒がしい。
その中で一番近くで聞こえているのが、ラデツキー将軍とゲンツさんの声だった。



