元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

 
「ところで今日はどんな用でここに?」

馬を繋いだ私はラデツキー将軍と並んで遠目に訓練の様子を眺めながら話した。

「大公妃殿下にライヒシュタット公爵の様子を見てきて欲しいと頼まれたのです。先週も公爵閣下は王宮に帰ってきませんでしたから。お元気ならばよろしいのですが、公爵閣下は人並外れた努力家ですので、あまり根を詰められていないか僕も心配で」

「そうか。私も陛下のご命令でハンガリー第六十連隊の軍事演習を視察に来たのだが、やはり陛下も公爵閣下の体調が気に掛かっているご様子だ。今も閣下は随分張り切っておられるようだが……声に疲れが見える。少し気がかりだな」

前を向きながらラデツキー将軍は微かに目を眇める。言われてみると指揮を執る声がちょっと掠れていることに気づいた。

やがて訓練がひと区切りついたのか、整列していた兵士達がぞろぞろと移動を始め、馬に乗ったライヒシュタット公がこちらにやって来るのが見えた。

「やあやあ、ラデツキー将軍閣下に大公妃秘書官長殿ではありませんか。お越しになっていたとは気づきませんで、失礼いたしました」

ヒラリと馬から降りたライヒシュタット公はびっしょりと汗を掻いている。彼の侍従がすぐにハンカチを持って駆けつけたが、それで容易く拭き取れるような尋常な量ではない。

「……失礼ですが、体調が優れないのではありませんか?」

まるで高熱を出しているかのように見えるその姿に、挨拶よりも先に咄嗟に心配する言葉が出てしまった。