――ゾフィー大公妃達が皇帝陛下にライヒシュタット公のギリシャ王就任の提案を上奏したのは、それから一ヶ月後のことだった。

その話題はたちまち宮廷を駆け巡り、皇后陛下、ライヒシュタット公の傅育官や家庭教師、さらに一部の武官らの支持を集める。

あらかじめ根回しをしていたのだろう、パルマからライヒシュタット公の母であるマリー・ルイーゼの支持も届いていた。

鷲の子が飛び立つため古い鳥籠の鍵が開かれると、誰もが思った。神に愛された英雄のため、運命の歯車が回り出すのだと。


ただひとつ。

フランスの革命がゾフィー達の予想よりはるかに早く訪れたという誤算さえなければ。