会話はしばらくたわいもないものが続いた。大流行しているワルツ音楽のことや、仮面舞踏会に三人で遊びに行ったときのこと。そこでライヒシュタット公が伯爵令嬢に熱烈なアタックをされて、ゾフィー大公妃がすっかり拗ねてしまったときのことなど。
(なんだか本当に、高校生や大学生の会話と変わらないなあ)
流行の音楽や遊び、それに微笑ましい男女交際。国や時代が変わったって、気の合う若者が揃えば盛り上がる話題は一緒だ。
(……こうしてると本当にただの学生みたいだ)
もし今が二十一世紀だったら、彼らはきっと明日も明後日もこんな平和で明るい時間を続けられるのだろう。
けれど、ここは十九世紀のオーストリアで、彼らはただの若者じゃないから。世界は彼らに悠久の穏やかな時間を許してはくれない。
「それでね、ツグミ。プロケシュ少尉があなたに聞いて欲しいことがあるんですって」
一杯目の紅茶を飲み終える頃、ゾフィー大公妃がそう切り出した。
呑気なお喋りをするために私はここへ呼ばれた訳じゃない。いよいよ本題に触れられるのだという緊張感が、無意識に私の背筋を伸ばす。



